今回テーマとして取り上げるのは、「SDGs」、「都市デザイン」です。2/17にシティラボ東京で開催された「SDGs × 都市デザイン 住み続けられる都市をデザインする~SDGsとまちづくり~」についてそのセミナー内容と、最後にデザイン思考とどのようにして絡められるのかを考察してきます。
目次
- イベントについて
- シティラボについて
- コーディネーター・登壇者紹介
- SDGsとは?
- SDGs日本モデル宣言とは?
- セミナー内容
- 考察~デザイン思考の観点から~
1.イベントについて
シティラボ提供の人気企画、「SDGs日本モデル宣言を読み解く」シリーズの第四回目のセミナーとして開催されました。今回は建築家や都市デザイナーの方をゲストスピーカーに迎え、どのようにして地域やそこに暮らす人々と向き合い、その土地ならではのポテンシャルを活かしながら課題解決しているのかについて、建築空間や都市空間といった観点から見ていきました。
2.シティラボについて

開催主体であるシティラボ東京は、持続可能な都市・社会づくりを行うためのオープンイノベーションプラットフォームで、事業創出を通じて持続可能な都市を実現することをビジョンとしています。
具体的には、コワーキングスペースやイベントスペースとしての役割以外に、企業やスタートアップによるソリューションビジネスの提供、学術界からのインサイトなどを通じた都市課題解決のプラットフォームとして様々な活動をしています。
3.コーディネーター・登壇者紹介
コーディネーターは川廷昌弘さん(博報堂DYホールディングスグループ広報・IR室CSRグループ推進担当部長)で、登壇者のお二人はそれぞれ小林博人さん(建築家、慶應義塾大学大医学員教授)、鈴木美央さん(O+Architecture)でした。
4.SDGsとは?

昨今多くの企業が自社の運営方針の決定の際にSDGsの各項目を考慮するようになったり、環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の頭文字を合わせたESG投資が重要性を増しているという時流柄、すでに皆さんもSDGsの名前やロゴを何度も目にしたり耳にしているのではないでしょうか。
改めてSDGsについてのおさらいをすると、SGDsは2015年9月に国連サミットで採択された2030年を年限とする17の国際目標であり、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目的としています。
5.SDGs日本モデル宣言とは?

その中でSDGs日本モデル宣言とは、日本におけるSDGsの全国的な実現に向けた動きを加速させるために開かれた「SDGs全国フォーラム2019」で採択された、人口減少や超高齢化など日本が抱える社会課題を解決していくための指針です。
6.セミナー内容
小林さん、鈴木さんよりお一人ずつ、普段ご自身が取り組まれているまちづくりをどのようにSGDsと絡められるか、ということを中心にプレゼンされていました。
小林さんは「自分たちの居場所をつくる」とプレゼンを銘打ち、参加型建築のべニアハウスをご紹介されました。その中で具体事例として被災地でのプロジェクトを取り上げ、被災地において物理的にだけでなく精神的にも、自分たちの居場所がないという状況下に置かれている住民の方々を巻き込みながら、彼ら彼女らに自分たちで住宅や施設を作ってもらうという取り組みです。このことでより地域に対するロイヤルティを持ってもらうことを目的としています。
さらに、現在手掛けられているSDGsランニングデザイン・ステーションの案件についても、どのようにして建物がSDGsと関連しているのかをお話しされました。この施設のコンセプトを「SDGs設計によるサステナブルな研究拠点」とし、その機能はもちろんのこと、建築計画の段階から各項目を意識して取り組まれたと言います。
一方鈴木さんのプレゼンは「場所を読み解き、個をいかす空間を設計し、豊かなくらしの舞台をつくる」というテーマでした。ご自身は建築は人を幸せにする力があると信じながらも、設計者として社会に貢献できる範囲の限界を感じ、マーケットというツールに目を付けました。
プレゼン内で取り上げた3つの事例全てに当てはまるのは、「いかにしてそのまちならではの良さや地域性を表現したマーケットを作り上げられるか」という思いでした。その取り組みにおいて、地域の人達に実際に話を聞いたり何度も現地に足を運ぶことで得た一次情報と、ありがちなデザインにとどまらない自由な発想でマーケットを成功させることが出来たといいます。
7.考察~デザイン思考の観点から~
今回お二人のお話を伺う中で、小林さんの自分たちの手で作るという「居場所づくり」の観点、そして鈴木さんのマーケットの企画プロセスが、デザイン思考にも通ずると感じました。
デザイン思考は顧客起点のビジネス上の課題解決のアプローチ手法のことを指しますが、ここで大切なのは「顧客起点」という点です。
ではまちづくりにおける「顧客」とは誰でしょうか。街に住む人々やその街を訪れる人々含めて関わる人みんなが「顧客」だと考えられます。その人たちに寄り添ってどのようなアプローチをとっていくべきなのか、ということがまちづくりの醍醐味であり、今回お二人が取り組まれたプロジェクトの根幹をなしている、と私は感じました。