平成30年5月23日に『「デザイン経営」宣言』を公表した特許庁。その特許庁自身が、「デザイン経営」を実践して業務を行ってみたとのこと。今年の4月4日に公開されたニュースリリースとそれに関連する資料を要約しました!
特許庁の「デザイン経営プロジェクト」って?
まず、そもそも「デザイン経営」とは何でしょうか?
「デザイン経営」とは、ユーザーを観察して気づいた潜在的ニーズを、誰のために何をしたいのかという企業の原点と照らし合わせることで事業化を構想する経営手法。「デザイン」は装飾という意味ではなく、設計という意味で捉えるとよいでしょう。ユーザーの課題に寄り添ったサービスを設計していく、ということですね。
『「デザイン経営」宣言』は日本の企業にこのデザイン経営の導入を促していくという表明で、「デザイン経営プロジェクト」とは特許庁自身がこの経営法を実際にサービスの改善に活かす取り組みのことです。取り組みは、60人ほどのメンバーがテーマごとに6つのチームに分かれ、6ヶ月かけて行われました。
取り組みの詳細
具体的な取り組みの内容を見ていきましょう!
まず、6つのチームはこちらです↓↓↓

「UIチーム」「海外チーム」「国内スタートアップチーム」「国内中小・ものづくりチーム」「国内サービス・ブランディングチーム」「広報チーム」の6つです。
次に、これらのチームが実際に踏んだステップをご紹介します。
①ユーザーインタビュー
「ユーザー視点」がキーワードのデザイン経営では、ユーザーインタビューに力を入れるのが必須。全体で240人ものユーザーに話を聞いたそうです!
②課題の発見~解決策の発案
インタビュー結果の統合→具体的なユーザー像の作成と共感→カスタマー・ジャーニーマップの作成→課題の絞り込み→解決案出し
の手順で行われたとのこと。カスタマー・ジャーニーマップとは、ユーザーが達成したいゴールまでの一連の体験・それに付随する感情を可視化したものです。
③試作品作り
出された案を形にしてみるフェーズです。案を絞り込み、試作品を作れるものは作り、作れないものはスケッチや絵コンテで表現。それらをまずは自分たちで試して改良を重ねていきます。
④ユーザーとの検証
解決策の試作品をユーザーに体験してもらい、意見を参考に再びブラッシュアップをします。ユーザーのより深いニーズが分かるため、とても有効です。
課題設定や解決策の精度を上げるため、①~④の段階が繰り返されました。
結果は…?
それぞれのチームが上記のステップに沿ってサービスの改善を図ったこの取り組み、具体的にどのような結果になったのでしょうか。今回は2つをピックアップしてご紹介します。他の結果が気になる方は、記事の最後に資料のURLを載せておきましたのでぜひそちらをご覧ください!
・UI(ユーザーインターフェース)チーム
想定ユーザー:孤軍奮闘する知財担当者
課題:申請した特許の「拒絶理由通知」が届いても内容の意味、対応の仕方が分からない。また、予算がないため、できれば弁理士などの代理人を使用したくない。
解決策:「拒絶理由通知書」への対応方法を簡単に知ることができるようにする
→書面にQRコードを印刷し、そこから通知書への対応法を分かりやすく解説するサポートページに飛べるようにする。
・国内スタートアップチーム
想定ユーザー:知財人材を取り入れたいスタートアップの最高責任者
課題:スタートアップの事業を理解し、戦略的な知財活用を提案してくれる人材がなかなかいない。募集をかけても集まらない。
解決策:スタートアップを理解する知財人材と知り合える仕組みを設立
→既存のマッチングサイトの精度を上げると共に、スタートアップの育成支援プログラム「J-Startup」と連携。
まとめ
いかがでしたでしょうか。実際にデザイン経営を実施した事例を見ると、イメージが湧きやすいですよね。既存の事業を改善、また新規事業を提案するには、徹底したインタビューに基づいたユーザー視点が鍵となることがよく分かります。
最後は、この取り組みをサポートしたメンターの方の言葉で締めくくりたいと思います。
『デザイン思考やユーザー中心のサービス開発は、「感じること」「考えること」「つくること」のサイクルを回し、解像度が上がるプロセスに価値があります。オフィスのなかにいて想像しているだけでは、サービスをデザインすることはできないのです。』(Takram代表 田上欣哉様)
出典:
経済産業省(2019)「デザイン経営プロジェクト」レポートを取りまとめました(2019年4月4日ニュースリリース), [online]
公表資料:
https://www.meti.go.jp/press/2019/04/20190404002/20190404002-1.pdf