HRM施策とは「human resource management」の略称で、日本語では「人的資源管理」、「人材マネジメント」などと呼ばれます。企業の経営資源には「人・物・金」がありますが、このうち「人」は、物や金の獲得や利用の主体となるものであり、最も基本的な資源とされています。HRM施策は、この「人」について、最大限に活用するための報酬や動機付け、育成などの様々なマネジメントを行う活動です。

「人」資源には、従業員だけではなく経営者をも含んだ「個人」としての意味合いと、それら個人を構成員とする人的組織としての意味合いの2つがありますが、HRMでは、個人は「人格や感情を持ち、状況次第で労働意欲が変動する」「技術は教育や経験を通じて向上する」と捉えています。また、人的組織については「リーダーシップなどによって生産性は変化する」と考えます。こうした前提のもとに人の採用や配置、育成や評価、報酬が行われ、人材の有効活用が図られます。日本でも戦前には、人的資源という言葉が存在していました。しかし当時は戦時の計画に基づいて、国家レベルでの兵力や労働力を指す言葉として使われていたのが現実です。1950年代になってから、米国の学者によって「human resources」という言葉が使われ始めましたが、HRMが本格的に学問として登場したのは1960年代に入ってからで、それは経済学と行動科学が結びついたものを基礎として生まれました。その後1970年代に、企業戦略としての人的資源管理の研究がより進み、それと共にHRMもビジネススクールの一科目として採用されたり、企業の人事部門の名称に使われるなどして、学問としての立場を固めてきました。

HRM施策においては、2つのモデルが有名です。1つは、ハーバード・ビジネススクールを中心として研究されているモデルで、もう1つはミシガン大学を中心に研究されているものです。ハーバード・グループのモデルでは、従業員からの影響を受ける領域として「人的資源フロー」「報償システム」「職務システム」の3つを挙げ、その領域ごとに複数の構造タイプを示してそれらの統合を図ろうとします。ミシガン・グループのモデルは、「選考」「評価」「報償」「開発」の4つの循環としてHRMを考えて、それを企業戦略と組み合わせて考えようとします。

いずれにしても、「人」の人格を尊重するという点がHRMの大きな特徴です。よく似た言葉に人事管理(personnel management)というものがあり、これをHRMと同義語とする意見もありますが、理念的に全く異なるとするのが一般的です。人事管理においては「人」を単純に労働力や生産要素と見なし、「コスト」として捉えるのに対して、HRMでは「人」は人格を持つ存在で、価値を生み出す資産と捉えるためです。しかし、「人」を人格を持った存在として捉えることはごく当たり前のことであり、日本においても少なくとも1980年代頃からは、「日本的経営」として既に実践されてきたことです。日本で自然に行っていたことが米国で学問として体系化され、逆輸入されたものがHRMであるとも言えるでしょう。

そういった意味では既に馴染みがあるはずのHRM施策ですが、従来の「日本的経営」と比較してみると、そこには1つ異なる要素があります。それが経営戦略との結びつきです。「日本的経営」では人格を尊重することは大切にされていたものの、経営戦略とどうシステマチックに結びつけるかという点については考えられておらず、そのため日本が今だ不得意とするところでもあるのです。HRM施策でマネジメントを行うのであれば、経営戦略とどのように結びつけるのか、人的資源をどのように経営戦略に落とし込むのかというところまで考えることは必要不可欠です。また、「人」を人格を持ったものとして捉えて戦略を立てるということは、企業は仕事と生活を切り分けて仕事の部分についてのマネジメントをするだけではもはや不十分で、ライフを通じてその「人」のキャリアをサポートし、マネジメントを行うという側面が大きくなっているということにも考慮が必要です。さらに、先行き不透明な経済状況の中で企業が柔軟に対応していくために、HRM施策の中の重要なキーワードである「ダイバーシティ(多様性)・マネジメント」とにもしっかりと対応していくことが、今後ますます重要となると言えるでしょう。


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