ブランドとは、企業が顧客に対して一定の価値の提供を約束するものであり、同時に顧客からは企業への信頼の証となるものです。この存在により顧客は製品購入時の選択におけるものさしを得ることができ、引いてはサービスを探す手間や失敗のリスク回避が得られます。なおかつ、所有や経験の満足度を高めることができるという、サービス・製品に備わった機能の範囲外の効用も持っているのです。企業は顧客からの信頼を得ることによりブランドロイヤリティが獲得でき、安定的で長期的な収益が期待できるようになります。また同業種・業界の競合企業との競走を優位にしたり、新規参入を抑制することもできるのです。

ブランドにはいくつかの種類がありますが、性質の違いで言えば主に3種類に分かれます。まずは会社名そのものがブランド名となっている「コーポレートブランド」、製品やサービスに付与されている「製品ブランド」、そして製品に内在している部品に対しての「成分ブランド」です。さらに製品ブランドの中でもいくつかの製品カテゴリーをひとまとめにした「ファミリーブランド」、この階層の下に展開する製品ブランドを「アンブレラブランド」と呼びます。

これらブランドの価値は企業や製品に名付けた時点で最初から備わるものではなく、ブランドが一定の属性や価値観、歴史やパーソナリティーが社会に認知および評価されて初めて付与されます。市場に正しくブランド価値を見出してもらうためには、長期的かつ地道なブランド構築活動が欠かせません。このように戦略的にブランド価値を育成していくことをブランディングと呼びます。ブランドを育てるには一定水準以上の品質やサービスを長期的に維持することはもちろん、顧客にどう見てもらうかなどブランドの付加価値も一緒に育んでいかなければなりません。

ブランディングに取り組んで行く際、自社の持つブランドがどの性質であるかを見極めておくと戦略が立てやすくなります。製品ブランドにおける戦略は、大きく分けてマスターブランド戦略とマルチブランド戦略の2つです。マスターブランド戦略は、製品カテゴリーのもとに展開しているアンブレラブランドの中からいくつか選定して、その配下に複数の製品を開発・展開していく方法です。1つのブランドに資源やコストを集中できるため効率が良く、ユーザーにも分かりやすいという利点があります。ただし、1つのブランドに資金を投入するため失敗をすると全部同時に傾くというリスクにも注意しておかなければなりません。一方マルチブランド戦略は、多彩なブランド展開をカタログやポートフォリオ的に持つ戦略方法です。幅広く市場のシェアを稼げて新規ユーザー開拓が望める上に、リスクが分散するという利点もあります。ただし財源も人材も分散してしまうため、マスターブランド戦略よりも非効率になったり、散漫な印象を与えるケースも想定しなければなりません。

製品ブランドの展開方法はさまざまですが、ブランド体系が複雑化するほど管理が難しくなります。また顧客からも違いや差異が分かりにくいというイメージを持たれてしまうと、ユーザー離れを引き起こしかねません。一貫性があって、企業内はもちろん消費者から見ても分かりやすい構造を保つことが大切です。これに加えて、「ぶれない価値を提供しつづけること」と「ブランドの意味合いを提唱しつづけること」が大切になります。たとえば美しい映像を提供するテレビをメインブランドとして展開しているのに、映像が関係ないエアコンや冷蔵庫にまで同じブランド名をつけるとブランドの価値も他の製品の価値も落ちてしまいます。軸をぶれさせないようにすること、さらに購入することで得られる効果やライフスタイルへの影響など意味合いを提唱することでブランドのイメージがユーザーの中に浸透していくのです。

忘れてはならないのは、企業が戦略的にブランディングを行うことも重要ではあるものの、最終的にはブランドは顧客の中に構築されるという事実を忘れてはいけません。ブランド戦略を立てたら、顧客にはどのようなイメージを持たれるか、何を必要としているかを常にシミュレートしながら計画・実行する必要があります。顧客と企業の接点である「タッチポイント」をできうる限りコントロールして、的確に反映させていくこともブランディングを行う上で重要なポイントです。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です