エクスペリエンスデザインを直訳すると「経験、体験をデザインする」となります。具体的なイメージのしにくい言葉ですし、実際のところ明確な定義があるわけではありません。単純に考えると「エンドユーザー(商品やサービスを使う人)が直接的に体験できることをデザインする」となるわけですが、実際はエンドユーザーの課題を解決するだけでなく、もっと複雑に絡み合った課題を解決するための手法ととらえられている言葉です。

例えば現代の企業は、売上の向上、顧客のつかみ方、社内スタッフや環境整備など、さまざまな課題を抱えています。これらの課題は単体で存在しているようで、そうではありません。「企業」という大きな枠で見たときには必ずつながりがあります。
つまり、『企業としての課題を総合的に見直す中から「解決すべき課題」を浮かび上がらせて明らかにし、誰にどのような体験を提供すれば課題が解決できるかを考えて実行すること』がエクスペリエンスデザインという考え方であり手法といえます。また、どのような課題に取り組むかによって、ユーザーがエンドユーザーとなることもあれば、社内スタッフになることもあるという点も押さえておきたいポイントです。

実は、エクスペリエンスデザインの考え方は、決して新しいものではありません。ではなぜ、最近になって注目されるようになったのでしょうか。それは、企業の評価ポイントが変わってきているからです。これまでは作り出す商品や保有している技術が評価されていましたが、昨今は「それらを使ってエンドユーザーに何が提供できるのか」が評価のポイントになっています。
現代はスマートフォンを筆頭に便利な道具があふれ、それらの多彩な機能、発信される情報量の多さは、ここで語るに及びません。SNS、Instagramなど、次々に新しいサービスも登場しています。こういった社会情勢を考えると、ユーザーにとって価値ある体験を創出するためには、時には外部の企業やサービスと連携することも必要です。自社の中だけで課題を解決しようとするのではなく、世の中にある便利な機能やサービスを組み合わせていくことも必要で、エクスペリエンスデザインの考え方でもあります。もちろん企業間の連携といったことが提案されることもあるでしょう。

このように解説すると「エクスペリエンスデザインなら、意外と簡単に課題の解決ができるのではないか?」と思われるかもしれません。もちろん解決すべき課題の内容にもよりますが、場合によっては事業計画の見直しやブランド戦略の再構築、新たな組織を立ち上げるなど、大がかりな動きになるケースもあります。また、ひと口にエクスペリエンスデザインといっても、対象となる課題によって取り組みがまったく異なることも押さえておきたいところです。
例えばプロダクトに対するエクスペリエンスデザインの場合は、フロントデザイン、それに沿ったオペレーションシステムを作り上げるといったことに重点が置かれることになるでしょう。一方ウェブサイトのエクスペリエンスデザインであれば、パフォーマンスを最適化することなどに重きが置かれるはずです。

エクスペリエンスデザインを考えるうえで大切なことは、言葉を定義することではなく「最終的にエンドユーザーに満足してもらうための仕組み、組み合わせをどのように作り上げていくか」にあるといえます。


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